恩田陸/劫尽童女
- 恩田 陸
- 劫尽童女
遥と同じく特殊能力を持つ犬・アレキサンダーと共に、孤児院に身を潜めるが・・・。
殺戮のために与えられた超能力に疑問を抱き、悩みつつも成長する少女の様を描く。
正直なところ、設定の面白さに惹かれて読んでみたものの、気になってしまう点が多かったというのがこの本を読み終えての感想。
この作品では、「ZOO」という秘密組織が出てきて、その組織と戦う超能力を持った少女を描いているのだが、幼少の頃は子供的な無邪気さから殺戮を楽しんでさえいて、自分の超能力に関して疑問に思うところも特になかったのだが、成長していくにつれて、自分の能力に対する嫌悪を感じていく・・・という感じで、物語と共に少女の成長を描いているのだが、少女の感情の変化がどうも唐突で、感情移入し難かったように思う。
あと、博士が何故組織から抜ける事となったか等、理由付けがしっかりしていない点もあるところも気になってしまう。
また、ラストの展開だが、恩田陸さんは最後の「締め」を勢いよく書いてしまう傾向にあるのか(「六番目の小夜子」もそういう感じだった)、少し無理があると感じた。
表現は悪いが、漫画誌の「ジャンプ」に連載している漫画が打ち切りになってしまった時のような、少々無理矢理なハッピーエンド(?)という感じがした。「ジャンプ」を読む方なら何となく理解して頂ける、と思う。
・・・散々批判的な事を書いてしまったが、勿論読んでいて面白かったところもあった。主人公の少女が隠れている孤児院に、カウンセラーが何人か来るのだが、そのカウンセラーの中に組織の人間がいるかも知れない・・・という展開になって、「誰が組織の人間なんだ?」と推量するところ等は、緊迫感があって非常に楽しめた。