村上春樹/ダンス・ダンス・ダンス | 海辺の読書記

村上春樹/ダンス・ダンス・ダンス

著者: 村上 春樹
タイトル: ダンス・ダンス・ダンス〈上〉


「羊をめぐる冒険」から四年。札幌の街で「僕」の冒険が始まった。
「僕」は複雑なダンス・ステップを踏み続けながら、様々な運命を通過していく。
周りの人達が消えていってしまい、喪失を繰り返していく「僕」の辿り着く先とは・・・?

羊をめぐる冒険の続編。だが、結構時間が経っている事もあり、文体や雰囲気は変わっている。(登場人物に名前がつく等々) また「ダンス・ダンス・ダンス」という題名も気になるところかと思われるが、実際のダンスとは関係がなく、抽象的なものとして「ステップを踏む」という表現が出てくるだけである。
僕としては「羊をめぐる冒険が最高傑作」という思いに変わりはなかったが、羊よりもこちらが良い、という方も結構居るようだ。
たしかに、この作品には羊には無い良さがある。

例を挙げると、登場人物の魅力は羊を超えると思う。
中学の頃の、何でもこなし、容姿も端麗という少年だった映画スターの「五反田君」、有名な写真家の娘で、冷めたところのある大人びた13歳の「ユキ」等、登場する人物の誰もがリアルに書かれていて、非常に魅力的。「ぼく」の屁理屈めいた喋りや、ジョークにも磨きがかかっていると思われる。

「風の歌を聴け」から順番に読むのが良いとは思うが、この作品だけ読んでも楽しめるかも。また羊だけ読んでこの作品、というのもあり、だと思う。